2026/02/11 17:55

前回の記事では、

ブース内を広く使いながら、強い吸引力と繊細な細吹きを両立させるために、

吸引力を下げるのではなく

塗料の噴霧方向と、空気の流れの向きを揃える

という考え方に至ったことを説明しました。

 

本記事では、

その考え方を具体的な構造としてどう実現したのかについて説明します。

 

1.「強く吸う設計」+「流れを作る設計」

従来の塗装ブースでよく採用される吸引方式のひとつに、

吸い込み口を狭い面積にして、

局所的に風速を高める構造が多く採用されています。

 

この方法は、

・吸引力が強くなり吹き返しを抑えやすい

・ファンの風量を効率よく吸引風速に変換できるので、ファンを小型化できる

という利点があります。

 

一方で、

風速が局所的に速くなるため、

ブース内の空気の流れが偏りやすく、

吸引力を強くすると、細吹き時に塗料が流されやすいというリスクがあります。

 

そこで私たちは、

「強く吸うこと」に加えて、「ブース内の吸引風の流れを」を設計することにしました。

 

2.大容量ファンの流れを水平方向に制御する『背面全面吸引』

我々が採用したのは、

大容量ファンで十分な吸引余裕を確保したうえで、

その吸引風量を一点に集中させず、

ブース背面全体に分散させるという考え方です。

 

背面全体を吸引面とすることで、

ブース内全域に、

手前から背面に向かって方向が揃った水平方向の吸引風の流れ

を作りやすくなります。

 

吸引風の流れが、ブース内の塗装対象に塗料を噴霧する向きと同じ向きになる

その結果、

塗料が吸引風に乗って、塗装対象に安定して付着しやすくなる。

 

缶スプレーのように噴霧圧力が高く噴霧量が多い塗装でも、

エアブラシによる低い噴霧圧力による繊細な細吹きでも、

安定して塗料を塗装対象に付着させることができます。

 

つまり、十分な吸引余裕を持つ大容量ファンの能力を

「塗料を流さない流れ」に変換しています。

 

その結果、

・噴霧量が多い塗装でも、吹き返しを抑えやすい

・噴霧量が少ない細吹きでも、塗料が流されにくい

という、

一見すると相反しやすい条件を、同時に満たせるようになりました。

 

3.斜めの整流板も不要にできる

 背面全面吸引では、

ブースの背面板の前側に多孔板を設けるだけで、

背面全域で吸引風を発生させることができるため、

斜めの整流板を設ける必要がありません。

 

その結果、

【開発経緯①】で挙げた

「斜め板に部品が接触して塗装しにくい」

という不満を解決できます。

  

まとめ

大容量ファンの吸引風の流れの向きを最適化した

・背面全体で吸うことで、ブース内全域で吸引風の向きを水平方向に揃えた

・その結果、強い吸引力と、繊細な細吹きを同時に成立させた

・斜めの整流板を不要にし、ブース内を広く使えるようにした

 

こうして、

前回までに整理してきた考え方を、

背面全面吸引方式という構造にまとめました。